Our Friend in Kanazawa

(日本語) 働く人と社会の幸福を追求する物流企業経営者が、金沢の幸福について語る/株式会社ビーイングホールディングス代表取締役 喜多甚一さん

Sorry, this entry is only available in Japanese.

今回「旅音のともだち」にご登場いただくのは、金沢の物流企業、株式会社ビーイングホールディングスの喜多甚一社長です。

旅音の経営陣にとって、喜多社長は経営の大先輩です。起業して一代で、北陸を代表する物流会社へ育てあげた喜多社長の経営観、幸福観、そして金沢観について詳しくお聞きしました!

(株)ビーイングホールディングスの詳細はこちらから

https://being-group.jp/

暮らしたい土地で生活できる幸福。そのための物流を担いたい

物流会社が追求する「運ばない物流」とは?

旅音(以下T):はじめに、ビーイングホールディングスの主業である物流業において、喜多社長が考える定義と、御社のキャッチコピーである「運ばない物流」について、お聞かせいただけますか?

 

喜多社長(以下K):僕らの仕事というのは2つの定義があります。一つは、無駄な移動や管理をいかに省いていくか。

商品が生活者に届くまでに、メーカーの倉庫、問屋の倉庫、小売業者の物流センター、小売店舗を通過しますが、この流れには重複した作業があります。

たまたま同じ建物の中にメーカー倉庫と問屋の倉庫、小売業者の物流センターがあったら?その建物間で商品を運ぶことは必要?出荷作業や仕分け作業は必要ないですよね。

「サプライチェーン全体をいかに合理化するか」が僕達の仕事です。それがまず一つ。

もう1つは、ライフラインの担い手です。弊社は生活物資の物流しかやりません。日常的な食品やトイレットペーパー、医薬品など、生活に欠かせないものだけに絞り込んで運んでいます。

災害はもちろん、大雪や大雨など事が起きると物流というものはすぐに寸断されてしまいますよね。かと言ってドラッグストアから商品がなくなったり、コンビニエンスストアに商品がなくなると、その地域の人達は生活できるでしょうか?

そこに生活者がいる限り、どんな状況になっても生活物資を提供し続ける。そういうライフラインを担うというのが、僕らの仕事の定義の2つ目です。

 

サービスを絞ったことで会社のミッションがはっきりした

T:生活物資という、人々に影響の大きいものをあえて担うに至った経緯は何でしょうか?

 

K:北陸で20年ほど前に大雪で、富山県と石川県で1週間、すべての道が遮断されるという事態が起こりました。あの時、社員やパートさん達は40分かけても歩いて出勤してくれました。ドライバーも会社に来て、いつ到着できるかも分からないのに荷物を積んで、出かけてくれる。この人達はすごいな、と感じました。こういう人達の労働というものを、最も価値のあるものに、最も尊い仕事にしなければいけないと思いました。

以前は家電や家具の配送もしていましたが、一切やめて(生活物資へ)シフトしました。結果として、社員にとって「自分達の仕事はどういうものか」を理解しやすい仕事になりました。

 

T:生活に欠かせない物資を運ぶことに集中した結果、会社のミッションが明確になったのですね。では次に、金沢、北陸という目線でお聞きします。物流というお仕事を北陸でやることの良さと難しい点とは?

 

K:弊社は東京本社と金沢本社の2本社制です。実は、北陸にこだわったことは特にやっていません。経済合理性だけでいうと、実は皆、関東に住んだほうがいいんです。

しかし、幸福であることと経済的に豊かであるということは、全く違うものです。

人間の幸福感には、好きな場所に住み、好きな人達と好きな仕事をして自分らしい人生を送るという要素が非常に大切だと、僕は思っています。

日本全国の住みたい地域で、暮らしが成り立つための物流

K:僕は釣りが大好きで、将来は能登半島の端っこで釣りをしながら過ごしたいんです。

能登だけじゃなく、日本全国にいい場所がありますよね。そういうところでちゃんと生活できるようにしていきたい。最終消費者がそこで幸福な暮らしができる環境をつくるのが、僕らの仕事だと思っています。

なぜなら、物流がないとお店が成り立たないからです。「生産者から消費者にものを届けるために、最も合理的な物流の仕組みを作る。そのためにはどうしたらいいか?」というのが我々の課題です。能登や他の地域、スーパーマーケットが近所にないような地域で、生活できる環境をどうやって整えていくのか。

今の時代、極端なことを言うとネットさえ繋がれば無人島でも働けるんですよ。ただ、人は食べるものがないと生きていけない。そういう場所で生活できる環境を整えるのが物流の仕事だと、僕は思っているんです。

 

T:誰もが暮らしたい土地で生活できる、それが人間の幸福。そのための物流を担いたい、というのが喜多社長の想いなんですね。

では、「幸福感」という視点で、金沢についてお聞きします。金沢の人は満たされているように思うんです。食べ物が美味しく、歴史・文化が豊かで自然もあって。金沢という土地は、幸福感という観点で見るとどうなんでしょうか?

 

恵まれていることに気づき、感謝することが「幸福」につながる

K:金沢の人の幸福感は高いと思います。本当にいい場所です。僕は今、東京と金沢、半分ずつ暮らしていますが、週末はほとんど金沢。食べ物は美味しいし、適度な田舎感がある。バランスがいいんですよね。

でも、幸福感というのは環境ではありません。本人がどういうふうに自覚しているのか。幸福の「幸」は恵まれるという意味です。恵まれていることに対して自分が気づいているということが、幸せである、ということです。

金沢の人は、恵まれていることに気付いています。というのは、金沢の人って県外の人に対して「いいところでしょう?」って聞くんです。地元の人から「いいところでしょう?」って言われる地域って多くない。ところが金沢の人は「どう?いいところでしょう?」と、沢=良いところというのを前提に話をします(笑)。

 

T:普通は自虐的に言ったり、引け目を持ったりしますよね。

 

K:そう。香川だと「うどんしかないので」とかね。「いいところでしょう?」って、あらかじめ良いところであるということをいかに相手に肯定させるか、みたいな言い方をしてくるのが金沢。

 

T:恵まれていることに感謝するから幸福感になる、と喜多社長はおっしゃいました。金沢の人は?

 

K:そこまで至っていないね。生まれもって当たり前にあるから、親と一緒の感覚。恵まれているとは思っていても、感謝しているかどうか・・・。

 

T:親がいなくなって初めて、ありがたさがわかる。でも感謝はなかなか口にできない。という状態と一緒でしょうか。

 

K:そう。金沢から出て、はじめて金沢が恋しくなるんです。

 

(後編に続きます)

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